「もう何年も抗うつ剤を飲んできたのに、いっこうに良くなる気配がない。」
これは当カウンセリングルームに来られる大半の方が訴える言葉です。
そして時にはその後にこう続きます。
「抗うつ剤を飲んでも治らないのだから、私はうつではなくて別の病気なのではないかと思うんです。」
もし本当のうつであれば、抗うつ剤で完治するはずだ、と考えてらっしゃるのですね。
そう訴えるクライアント様に、私はまず「抗うつ剤はうつ症状を抑える薬であって、治す薬ではない。」というお話しをします。
過剰なストレスや、怒りや絶望感など、何か原因があって、その結果、脳内物質の分泌量が減って、抑うつ的な気分が発生します。
そういった症状に対して抗うつ剤は、ひとまず脳内物質を分泌する手伝いをするので、気分を上げて楽にしてくれます。
でも、だからといって自分が持っている本当の原因である「深い怒り」や「恐怖反応」が無くなったわけではないのです。
ストレスによって損傷した脳や神経系のダメージが取り除かれたわけでもありません。
それらにはやはり心理的、神経学的な働きかけをして癒していく必要があるわけです。
それをしないことで、うつが必要以上に長引いたり、再発を繰り返したりしてしまうことがあるわけです。
では、絶対に抗うつ剤だけでは治らないのか? というと、もちろんそんなことはありません。
薬だけで治るケース
うつと診断された人の40%前後の方は、抗うつ剤だけで完治していくと言われています。
それでは、薬だけで治っていく人にはどんな特徴があるのかというと、1つのモデルを使って説明すると次のようなケースがわかりやすいと思います。
Aさんは、会社での業績悪化によるリストラの恐れと将来の不安と闘いながら、なんとか日々のオーバーワークをこなしていました。
毎晩、帰宅は終電でストレスはいっぱい。
そんな中でなんとかギリギリやってきたにもかかわらず、結局はリストラに遭い、職を失い、失望感と将来への不安感に苛まされました。
そして、それと同じタイミングで、長年付き合った恋人に別れを告げらます。
それらがすべて重なったことでショックを受け、食欲もなくなり朝も起きられなくなり、数ヶ月の間、家で寝たきりでひきこもりのような状態になりました。
心配した家族は、心療内科を勧め、そこでうつと診断され抗うつ剤を服用するようになります。
1つの例としてあげましたが、こういったケースのうつの原因を上げますと、
オーバーワークによる【脳や神経へのダメージの蓄積】
リストラによる【自信喪失】【失望感】【将来への不安】
失恋による【悲しみ】【喪失感】
といったものが合わさっています。
こういったケースは、たまたま運悪く、過酷な状況が一気に押し寄せて、ストレス耐性の限界を超えた結果として、うつになっているので、
抗うつ剤で気分を上げながら、原因となった状況を1つ1つ取り除いていくと自然に良くなっていく場合があります。
具体的には
【脳や神経へのダメージの蓄積】→休養や散歩
【自信喪失】【失望感】→友人からの励ましや支えや話し合い。
【将来への不安】→就職活動をして新しい仕事を得る。
【悲しみ】【喪失感】→新しい出会いや、新しい恋。
といった具合に、状況をクリアしてより良い現実を作っていくことで、うつの原因自体がなくなりますので、回復していくのです。
また、たまたま不幸な出来事が重なって起こっていますので、再度同じように不幸が重なることは考えにくいでしょうから、再発のリスクも少ないと思われます。
では残りの60%、つまり過半数以上を占める、薬で良くならないケースとはどんなものでしょうか?
うつが薬で治らない5つのケース
それにはおおよそ、以下のような原因が考えられます。
(1) 脳がダメージを受けてしまっている場合。
過労でのストレスの場合でも、初期段階では休養を取れば回復していけます。
人間の持つ自然治癒力で十分間に合うわけです。
でも、完全に燃え尽きてしまって、脳が損傷を受けてしまっている場合は薬や休養だけでの回復は困難になります。
運動療法、栄養療法、リハビリをしていかないことには、再度職場復帰できるようになることなく、逆に休みすぎで脳も体力も衰えて行くケースが多いのです。
(2) トラウマ化してしまっている場合。
例えば同じ過労であっても、職場のことを考えると胸がぎゅっと締め付けられたり、嫌な感覚が出てきてしまうという場合は、職場や仕事がトラウマになっていると疑ってみる必要があります。
トラウマ化していると、別の会社に就職活動をしようと思っても、スーツを来ている人を見たり、職場の雰囲気を感じただけで、気持ちが落ち込んだり、力が出なくなったりして、どうしても前に進めなくなってしまいます。
昔は働く自分に自信があったのに、まるで別人になったように怖気付いてしまう。
そういった症状はトラウマ化されてしまった典型的なケースです。
こういう場合に、気持ちや考え方の問題とされることが多いのですが、こういったトラウマ反応は、気持ちや考え方ではどうすることもできないくらい、原始的な反応です。
そして、トラウマの難しいところは、時間によって解消することが少ないという点です。
こういったケース。つまりトラウマ反応によって、うつ病と診断されているケースは非常に多いものです。
私の感覚では、うつが治らないと訴える方のほとんどは、トラウマ反応を持っています。
「うつと診断された人が持つトラウマ反応」はとても大きなテーマですので、また改めて記事にしたいと思います。
(3)感情の処理がうまくできていない場合。
先の例で言うと、失恋の喪失感や裏切りを感じた場合、その感情は身体の内蔵に強烈なエネルギーとして発生します。
そういった感情エネルギーを残していると、身体はダメージを受けて生命力を奪い、人生を前に進めようとする力を失ってしまいます。
でも、感情の解消の方法は、学校で習うわけではないので、誰しもなんとなくこれまでの経験で独自の方法で感情を解消しているわけです。
ですので、それができる人もいれば、できない人もいます。
出来る人は、悲しみを解消して次の恋人を見つけて、人生を進めていけますが、そうでない人は、悲しみにとらわれてダメージを受け続けて、いつまでも過去の感情にダメージを受けてしまいます。
こういった場合は、感情を解消する方法を学ぶ必要があるのです。
(4)思考パターンや性格から来る場合。
考え方や捉え方に癖がある場合は、どこの環境に行ってもいつも同じ反応が起こり、心にダメージを受けてしまいます。
例えば人が苦手で、どんな環境に入っても人間関係で疲れてしまう。
どの職場に行っても、仕事を断れなくてオーバーワークになっています。
といったケースです。
認知行動療法などを使って、思考パターンを変えて行くのもよいでしょうし、その思考の奥にはトラウマが隠れていますので、トラウマを癒すのも1つの手です。
ただ、それをしない限り、薬で治るものではありません。
(5)その他のケース。
例えば産後うつなど、ホルモンのバランスや栄養状態によってうつになっているケースです。
栄養療法や運動療法をしていかないと、薬だけでは変わりません。
それ以外にも、スピリチュアルな問題や、無意識が持っている人生上の不満がうつ症状を作っている場合など、いろんなケースが存在しています。
本当の違いを知る
ではもう一度、先のAさんのケースを振り返ってみましょう。
そうすると、実は同じケースで同じ原因だったとしても、薬で治る人と、治らない人が存在するというととがわかってきます。
うつを作った状況だけではなく、それによってどれだけのダメージを受けたのか? そしてそれを超える心のスキルがあるかどうかが重要なのです。
Aさんの例を使って、もう一度見てみましょう。
オーバーワークによる【脳や神経へのダメージの蓄積】
休養によって回復できるレベルの疲労なのか?
物理的に脳が損傷しているダメージなのか?
リストラによる【自信喪失】【失望感】【将来への不安】
再出発しようとイメージした時に身体の拒絶反応は無いか?(トラウマ化していないか?)
現実に再就職できたかどうか?
会社や上司に対する恨みの感情を解消するスキルがあるか?
失恋による【悲しみ】【喪失感】
悲しみの感情を解消できそうか?
失恋を良い学びとして捉え直して、過去にできそうか?
ネガティブな捉え方は、歪んだ考え方をしていないか?
新しい出会い、もしくは新しい恋人ができるか?
以上のように、同じ原因でうつを発症しても、さまざまな要素によって、薬で解決できる人もいれば、できない人もいるわけです。
その違いは、受けたダメージの深さと、環境改善力、そして心の癖や心のスキルなどによって生まれます。
これらをクリアできるようであれば、薬を飲んでしっかり休んで、少しずつ行動して行けば復活することができると思います。
しかし、それができていないと、症状が一時的に潜んでいるだけで、うつを発動するトリガーはそのまま存在しています。
ですので、また同じような状況になるとうつが再発してしまう可能性が高いわけです。
一説には80%と言われるほど、うつの再発率が高いのはその為です。
薬と休養だけの対策に限界を感じたら、根本的な原因から改善して行きましょう。
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